学科長よりご挨拶


作業療法における「作業」とは

作業療法における「作業」とは,簡単に言うと「人が,あるいは人々が,日常でしたい,しなければならない,することを期待されていること」を指しています.作業療法学は,人の作業,つまり人が「したいこと」「していること」に焦点をあて,そして「したいこと」や「していることをし続けること」を可能にしたり,「より上手く出来るようにするためには、どうすればいいのか」についての知識と技術を生み出す学問です.

世の中には,様々な治療法・介入法があります.それらは各々特有性・専門性があるからこそ,存在意義があります.医療における作業療法の特有性・専門性は,人の「作業」に焦点をあて,作業を治療・介入手段として用い,その特有の成果は,できなかった作業ができる.作業がより上手くできる.そして生活の満足感が得られる作業と人が結びつくことです.

人は,作業を組み合わせて,自分の生活をそして人生を創り上げます.どの作業をするのか,できるのかは,人の生活や人生,そして幸せに大きな影響を及ぼしていると言えます.どんな作業をするかによって,その人の役割や地位やイメージがつくられます.また,作業をすることなくして,人は成長や発達も,そして健康を保つことすらできません.多くの人は,この作業の重要性に気が付いていませんが,重要であるからこそ,作業を扱う,作業を出来るようにする作業療法士という専門職が存在しているのでしょう.

 これまで,他の医療職と比べると,その存在が見えにくいと言われてきた作業療法士ですが,近年徐々に,その存在の重要さの理解は広がってきていると思います.理解が広がっている理由の一つは、科学の発展が関係していると思います。一般的には,体の動きの回復や発達、維持する練習やトレーニングには,単純な体操や機械を用いた繰り返しの動作練習が効果的なイメージがあるようですが,脳科学の発展と共に,『作業』を用いた練習の方が,効果が高い場合も多いことが明確にされてきています.また,様々な研究成果から,日常で適切に作業を行うことが人の健康的な心の発達や回復,維持に役立つことも示唆されています.科学の発展と共に、益々、作業の重要性が示されていくように思います。


作業療法士への道を目指してみませんか?

 

 英スタンフォード大学でのテクノロジーと雇用の研究(オズボーン&フレイ,2013)で、作業療法士は,IT,ロボティクス技術が発展しても,生き残れる職業ランキングで第6位にランクインしています。また、国内でも野村総研(2015)が、人工知能やロボット等による代替可能性が低い 100 種の職業 に作業療法士は選ばれています。ITやロボットなどが発展すると、現在ある職業の49%がなくなるという試算が出されていますが、作業療法士は、将来的にも人にとって大切な職業であることが認められているのです.

 病気になったり怪我をすると,これまでしていた,しようとしていた多くの作業をすることをあきらめ,作業を再開するのは,「病気や怪我が治ってから」と考える人が多いようです.この考えと作業療法の考えは逆です.作業療法では「手足が動くようになってから,したいこと(作業)をする」のではなく,「したいこと(作業)をすることを通して,手足を動くようにする」のです.「心や頭の働きが回復・発達してから,何かをする」のではなく,「自分がしてもいいと思う何かをしながら,心や頭の働きを回復・発達させていく」のです.子供から大人までどんな人でも何も(作業を)しなければ、何の知識を得ることもなければ,何も上手くできるようになりません.何も(作業を)しなければ,今自分がもっている頭や身体の能力を維持することすらできません.人はもともと何か(作業)をすることで,成長し,回復し,そして生活を組み立て生きる存在です.

 こうした人の作業的な存在特質を基盤とし,病気や障害に焦点をあてるのではなく,人のしたいこと(作業)に焦点をあてて,作業を用いて治療・介入を行い,人の生活を支えるユニークな学問である作業療法学を学び,それを活かす作業療法士への道を目指してみませんか?

 もう少し,詳しく作業療法のことを知りたい人は,青弓社から出版されている「作業療法士になろう」という本や,日本作業療法士協会のパンフレット等を参考にしてもらえるといいと思います.いろんな角度から,作業療法士の魅力を知ってもらえると嬉しいです.

2017年4月1日 作業療法学科長

齋藤さわ子